近年,自己免疫学的機序を背景とした脳炎が存在することが明らかとなってきている.とくに,神経細胞の膜表面を抗原とする自己抗体が関連する脳炎が注目されている.この中には,NMDA受容体脳炎のように新たに一つの疾患単位としてみとめられたものもある.自己抗体がみいだされ自己免疫性脳炎の血清・髄液での診断が可能となったが,自己抗体の解析には適切な抗原の調整と解析方法の選択が必要であると同時に,臨床的意義を十分に理解する必要がある.自己抗体関連脳炎の中には,辺縁系脳炎や進行性純粋小脳失調症を呈する疾患が多く,様々な自己抗体の関与が知られており,臨床的鑑別が必要である.