臨床神経学
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教育講演3
戦前日本の神経学
髙橋 昭
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2013 年 53 巻 11 号 p. 926-929

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抄録

日本の神経学はオランダの軍医Pompeから19世紀中期に長崎に導入された.その門下の司馬凌海は日本最初の神経治療薬を紹介した.その後,ドイツからBaelzが来日,その門弟らが1902年に「日本神經學會」を創設した.当時の日本は国民病の脚気が神経学研究の中心であった.しかし,神経学者は脚気の病因として感染説あるいは中毒説を掲げ,正鵠を射ることができなかった.Vitamin B1欠乏が確立されると神経学の研究は下火となった.神経学の講座の独立が遅れたこと,講座制のため神経学が正しく継承されなかったこと,神経症候学,神経診断学などの教育が不十分であったことなどから,戦前日本の神経学は一時低迷した.診断学が充実され,神経内科講座が独立し,神経内科学が隆盛したのは戦後になってからである.

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© 2013 日本神経学会
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