2015 年 55 巻 8 号 p. 567-572
症例は55歳女性である.7年前に左顔面の異常感覚と右視床病変を生じたが自然消失した.1年前より右上下肢運動障害と両側基底核病変が出現・増悪した.続いて左後頭葉病変が新出し視神経炎も併発した.経過中,ステロイド反応性のぶどう膜炎を2度発症した.長期にわたる増悪寛解型の経過より当初は多発性硬化症などの炎症性疾患を考えたが,ステロイド治療の効果が不十分だったため脳生検を施行し,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断をえた.中枢神経原発悪性リンパ腫が一時的に自然消失することは知られているが,本例ほどの長期経過をとることはまれであり炎症性疾患との鑑別上重要な症例であると考えられ,報告する.