2018 年 58 巻 1 号 p. 30-34
症例は43歳男性である.緩徐に進行する構音障害と歩行失調,幼児退行などの精神症状,脳幹・小脳の萎縮性所見より脊髄小脳変性症が疑われ入院した.口内炎,陰部潰瘍,毛囊炎様皮疹,HLA-B51をみとめ,髄液IL-6高値より慢性進行型神経ベーチェット病と診断した.ステロイド,メトトレキサートの治療効果に乏しく,インフリキシマブで髄液IL-6の減少が得られたが症状は改善しなかった.本症例は広範に不可逆性の脳組織障害が生じた難治例と考えられた.脳幹の萎縮が進行する前に免疫治療を介入すべき疾患であり,精神症状と運動失調症がみられる症例では診断に有用である髄液IL-6を測定することが望ましい.