2019 年 59 巻 7 号 p. 436-441
症例は54歳男性.入院10日前から複視が,9日前から左眼瞼下垂が出現した.入院時は高度の左眼瞼下垂と全方向性の左眼球運動制限を認めた.頭部MRIで左側頭頭頂部に造影効果を伴う硬膜肥厚を認めた.全身CTで右顎下腺腫瘤,びまん性甲状腺腫,肺門部リンパ節腫脹がみられた.血清IgG4が高値(240 mg/dl)であり,IgG4関連疾患を考慮したが,顎下腺腫瘤の病理所見で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,サルコイドーシスが示唆された.肥厚性硬膜炎の背景疾患の検索においては,特に本症例のように高IgG4血症を呈する場合,慎重な病理学的診断が重要であり鑑別に留意する必要がある.