抄録
グラフの3-D表現に関して,余分な情報の付加であり,かえって読み取りを困難にするという意見がある(例えば,Tufte, 2001)。しかしグラフの読み取りに関する実験的な検討は,まだ十分には行われていない。本研究では円グラフを用い,グラフの傾きと回転の二つの要因を操作し,この問題を検討した。実験1では,円グラフの仰角を4段階に操作した。実験2では,グラフを回転させ基線位置を4段階に操作した。被験者はグラフの特定の領域が,全体の何パーセントに当たるかを数値で回答した。分析の結果,実験1では,被験者の読み取りの誤差に有意な差は認められなかった。実験2では,最も大きな領域の読み取りで有意差が認められた。以上の結果から,円グラフに関しては3-D化が読み取りを誤らせることはなく,むしろグラフの基線位置が重要であることが示唆された。