抄録
笹岡ら(2005)は,物体を能動的に回転させて見えの変化を観察することで,その後の物体認識成績が向上することを示した.本研究では,この能動的観察が影響を与える脳部位についてMEGによって調べた.被験者は,継時的に角度差をもって呈示される二つの物体の比較照合課題をMEGシールドルーム内で行った.計測は2セッション行われ,第2セッションの前に能動的観察を行う被験者群(Active群)・受動的観察を行う被験者群(Passive群)に分けられた.両群の多くの被験者で第二刺激提示後200-400msにおいて左頭頂間溝領域に磁場源が推定されたため,その時間帯の左半球全チャネルのRMS値を調べたところ,Active群において第2セッションでの値が有意に減少し,角度差が大きい条件でその傾向は顕著であった.以上の結果から,能動的観察が左頭頂間溝領域の活動に影響を与えることが示唆された.