ドライビングシミュレータ環境での運転時において,聴覚刺激の処理が視覚刺激検出に及ぼす影響が二重課題法を用いて検討された.その際に,n-back課題を用いた聴覚刺激によるメンタルワークロード課題の有無と先行車両の有無が操作され,光点の検出反応時間が計測された.結果,聴覚課題がある場合には反応時間の遅延とNASA-TLXによる主観的負担感の増加がみられた.また,先行車提示の場合,反応時間は遅延しないが主観的負担感は増加した.これは注意資源をより配分することで反応課題へ適応していることが示唆された.検出反応時間は標的刺激が周辺に提示される場合に最も遅延した.これらのことより,聴覚情報提示が運転操作に対する心的負担を増大し,前方での情報獲得を妨害することが示された.