本研究では,客観的な注意機能の測定結果と質問紙を用いた主観的な注意機能の評価を比較し,注意機能に関して実際の課題成績が主観的評価と関連しているかどうかについて年齢差を検討した.実験には高齢者19名と若年者14名が参加し,客観的評価として課題切替テストを主観的評価として日常注意経験質問紙と失敗傾向質問紙が用いられた.結果から,若年者と比較して高齢者の場合は客観的評価では注意機能の低下が示されているにも関わらず,主観的評価では自らの注意機能の状態をよりよく報告し,失敗の頻度を少なく回答する傾向が見られた.また,高齢者の中でも注意機能が低いと考えられる群ほど自己評価が高かった.本研究より,注意機能が低下した高齢者ほど機能低下を意識できないという特徴が見出された.高齢者における問題には注意など認知機能そのものの低下だけではなく,自己モニタリング機能の低下も関係している可能性が示唆された.