日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第5回大会
セッションID: o2A-1
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口頭発表
統語処理におけるBroca野内の機能分担
*永井 知代子乾 敏郎岩田 誠
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キーワード: Broca野, 統語, 失文法
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抄録

Broca野のうち弁蓋部と三角部は,神経解剖学的にも機能的にも違いがあることが指摘されている.本研究は,これらの部位に限局病巣をもつ日本人脳梗塞患者の統語理解力を比較し,その違いから各部位の機能を考えた.対象は主病巣が弁蓋部であるOp群と三角部であるTr群で,可逆文(例・リスがトラにゾウを渡した)を聞いた後にぬいぐるみを操作して文を再現することが求められるObject Manipulation Taskを行った.正答率とエラーパターンから,Opでは関係節文が,Trでは関係節文より与格文の方が不良であり,基本語順に沿った意味役割付与はTrで目立つという違いを見出した.一方両群ともかき混ぜ能動文は不良で,アイテムの誤選択,関係節文構造の単純化は両者でみられた.日本語の特性を考慮すると,これらの結果は,Broca野の中でも弁蓋部がより系列処理的な統語に関わり,三角部はより認知的・意味的処理を行うという仮説を支持するものである.

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© 2007 日本認知心理学会
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