抄録
本研究は注意に関わる認知課題達成ならびに日常的注意に関するメタ認知評価が認知的加齢とどどのような関係にあるのかを検討することを目的とした。大学生93名,高齢者210名を対象とした小集団実験により,AIST式認知的加齢検査,分割的注意に関する質問紙,認知的失敗傾向の質問紙を実施した.その結果,加齢に伴い注意課題成績はいずれも低下し,認知的失敗はメタ認知評価が甘くなった。一方,分割的注意のメタ認知評価は加齢により低下した。さらにパス解析の結果では,加齢から注意課題成績へはいずれも関連性が認められたが,分割的注意質問紙の加齢からの独自関連性は消失し,注意課題の数字探索,課題切替からの関係性のみが有意となった。認知的失敗のメタ認知評価は,加齢からの独自関連性に加え,数字探索,課題切替の低成績者ほど甘くなった.日常的注意のメタ認知評価において,認知的失敗と注意分割は大きく性格が異なることが示された。