抄録
最近の高齢者向け携帯電話には,聴力低下に対応する技術として,相手の声がゆっくりに聞こえる話速変換機能が盛り込まれている.本研究では,この機能の使用による認知的な影響について明らかにするため,高齢者と若年者のペアによる対話実験を行った.実験には12組のペアが参加し,携帯電話を用いて対話課題を3試行実施した.第2試行では,高齢者が使用する携帯電話において話速変換機能を作動させた.試行ごとにおこなわれた主観的評価を分析したところ,話速変換機能を使用した場合,高齢者ではより話しやすいという評価が得られたのに対し,若年者ではより聞き取りにくいという評価が示された.これらの結果について,対話システムという認知的人工物の特性と対話という認知的協働過程の関係にもとづき考察する.