抄録
本研究は囲碁熟達者の囲碁図における卓越した記憶能力について検討したものである。Reitman(1976)以降,囲碁熟達者の記憶優越は,チャンクを重複させることに起因していると考えられてきた。そこで,異なる複数の盤を連続呈示することにより,チャンクの重複を限定する課題を用いた。この課題はGobet & Simon(1996)で使用されたmultiple boards taskを囲碁に応用したものである。そして,囲碁熟達者における記憶優越がチャンクの重複だけで説明可能であるのか,さらに拡張された理論を必要とするのかについて検討した。また,遅延条件を加えることで,検索手がかりが短期記憶だけに保持されているのかについても調査した。実験計画は2(遅延:ある,なし)×5(呈示盤面:1,2,3,4,5)の2要因被験者内計画である。刺激の呈示時間は5秒間で,テストは再生課題であった。