抄録
自動車運転中の聴覚メッセージによって運転者の注意が阻害され事故につながる可能性がある。本研究では2つの異なる注意資源特性を持つ記憶課題が視覚的な標的検出成績に与える影響を検討した。記憶課題として、数字系列を聴覚提示して記銘の後、回答するために聴覚的処理を要する課題と視空間的処理を要する課題を用いた。視覚課題としては注視点の位置で標的図形の弁別を行うと同時に、注視点周辺に散在する小さな四角形が短時間円形に変化するのを検出する有効視野課題を用いた。その結果、周辺視野での変化の検出反応時間は記憶課題が視空間的処理を必要とする場合に長く、中心視野での図形の弁別反応時間も視空間的処理を必要とする場合に長く、検出の失敗はより多くなった。この結果は、聴覚的情報であってもそれが視空間的処理を引き起こす場合には視覚課題の遂行を妨害することを示し、運転時に与えるべきではない情報について示唆を持つものである。