検索誘導性忘却(Retrieval-induced forgetting; M. C. Anderson, Bjork & Bjork, 1994)とは、ある項目を検索した結果、その項目に関連する項目の再生成績が低下する現象のことである。この現象は単語刺激だけでなく目撃証言、視空間的な図形などの刺激材料においても生じることが示されている。本研究ではBarnier et al., (2004)と同様に快・不快・中立の感情語を刺激として用い、自伝的記憶における検索誘導性忘却の再現性と感情の影響を検討した。実験の結果、検索練習カテゴリーのうち練習をした記憶はベースラインである非検索練習カテゴリーの記憶より正答率が高く、練習をしなかった記憶は正答率が低いという検索誘導性忘却が生じた。感情価ごとの正答率は、ポジティブ語もネガティブ語もニュートラル語より有意に正答率が低く、感情的な記憶は忘却が起こりやすいことが示唆された。