抄録
視覚的物体の認識や,名詞カテゴリを汎用する際に,人は色や肌理などの部分的特徴よりも,形状などの全体的特徴をより重視する事が示唆されている.本研究では,部分に対する全体的特徴の優位性は物体の分節化と関連すると仮説を立て,事前知識の介入しない人工的な「物体」の発見過程を検討した.実験では,一場面にランダムな配置で提示される四つのブロックパタン(要素)のうち二つの要素からなるペア(実験上定義された物体)を分節化し,要素ペアの特徴を答える事が協力者に求められた.学習目標である要素ペアは部分的・全体的特徴で定義され,協力者は未知の要素ペアの特徴をフィードバックにより探索・学習した.密集した要素が提示され分節化が困難な条件と,疎に要素が提示され分節化が容易な条件を比較した結果,分節化が容易な場合では要素ペアの全体的特徴をより重視する傾向があり,物体分節化が全体的特徴の優位性に関連する事が示唆された.