乱数生成(RNG)課題の分析手法、ならびにこの課題に特化されたワーキングメモリモデルである「軸モデル」(板垣,2005)は、数表象の音韻特性と視空間特性(マグニチュード)を利用した2つの生成方略と、それらの方略循環によって保持されるエピソード・バッファ容量、およびそれらの時間的処理効率を評価する。乱数生成課題の成績は人間の発話刺激に妨害されるが、ピンクノイズの影響を受けないことが知られている。本実験では発話刺激とピンクノイズ刺激の違いを検討するために21名の実験参加者を対象に1Hz, 2Hz, 4Hzの3段階で左右に音像移動させるピンクノイズ刺激を各90秒間、順序を変えてヘッドホンによりに呈示し、同時遂行したRNG課題への影響を検討した。その結果、音像移動速度の促進傾向は音韻特性を利用する方略にステレオタイプ化を生じさせたが、視空間特性を利用する方略とバッファ容量、処理効率には影響を与えなかった。