本研究では,人が持つ一番古い記憶である最幼児期記憶を想起させ,その想起内容について分析した。Bruce,Wilcox-O'Hearn,Robinson,Phillips-Grant,Francis,& Smith(2005)は,一番古い断片的な出来事(fragment event)の記憶と個人的な出来事(personal event)の記憶を想起させ,想起された記憶内容について分析した。断片的な出来事の記憶とはストーリー性がない記憶であり,個人的な出来事の記憶とは出来事について最初から最後まで思い出せる記憶である。その結果,断片的な記憶は個人的な記憶よりも想起した経験時期の年齢が低いことが示された。そこで本研究では,想起した記憶の断片化の程度によって経験時期に違いが見られるのか,Bruce et al.の知見を検証した。また,記憶の感情価によって記憶の断片化の程度が異なるのかについて検討した。