抄録
本研究は、日本舞踊の動きが観者にどのような感情を喚起させるかを検討することを目的とした。特に日本舞踊の流派の違いによる印象への影響について検討を行った。また、各流派の印象の違いが、どのような動作から導かれたものかも検討した。実験は、5流派を代表する女性舞踊家によって、「娘道成寺」という演目の一部分を所属する流派の型(振)で踊ってもらい、それをビデオ収録し、その映像についてSD法により心理評価の検討を行った。また、その踊りの型(振)をモーションキャプチャで計測し、型(振)の違いによるデータ解析を行った。その結果、同じ演目であっても、流派によって観者に与える印象が異なっていた。また、心理評価の結果でみられた男女性とモーションキャプチャで解析された回転速度の緩急とで相関がみられた。このことから、わずかな動作の差であっても観者はそれを認知し、異なった感情を喚起することがわかった。