合奏場面において、演奏者が演奏を調整するのに共演者の身体動作を利用することが指摘されている。筆者はこれまでの研究で、対面条件で視覚情報が得られる場合には演奏者は共演者の身体動作を情報として利用し、それによって非対面条件と比較して時間的調整をよりよく行える可能性を示唆する結果を得た。一方、対面条件を行った後の非対面条件では対面条件と同等の水準で時間的調整が行われるという結果も示され、身体動作が常に合奏の時間的調整に重要であるわけではないことも示唆された。本研究では、身体動作がいかなる場合に合奏の時間的調整を行うのに重要となるかを検討するため、2名の実験参加者が電子ドラムを用いた等間隔の打叩を同期させる課題を行った。課題は対面条件で複数回にわたって実施し、打叩の同期成績と身体動作を試行間で比較した。本研究から得られる結果は、合奏場面での身体動作の役割を詳細に明らかにするのに重要である。