抄録
音楽演奏において,演奏者は演奏音のみを手がかりとしてコミュニケーションしているわけではない.演奏者らは演奏中,音響的コミュニケーションとともに視覚的コミュニケーションを行っている.河瀬ら(2006)は演奏中に演奏者間,演奏者-聴取者間において用いられるコミュニケーション・チャネルについて検討し,その結果から演奏場面において演奏者は複数のコミュニケーション・チャネルを用いてコミュニケーションを行っていることが示唆された.本研究ではその中でも視覚的手がかりに注目した.本研究ではまず,演奏中にやり取りされる視覚的手がかりの中でもその重要性が指摘されている身体動作に注目し,身体の各部位の使用について検討した.加えて練習およびライブ場面での演奏者の配置についても検討した.本研究は音楽演奏中のコミュニケーションの全容を解明するための一助になると考えられる.