心的帰属・表象に関する視点取得の研究では、自己視点と比較して、他者視点で課題を行う際に前頭前野内側面(MPFC)や側頭頭頂接合部(TPJ)の活動が強まることが報告されている。これらの研究は条件間で異なる刺激を用いているため、異なる心的処理が行われている可能性があり、自己と他者の視点特異性を直接検討できていない。この点を明らかにするため、本研究は心的過程の中でも推論に焦点を当て、条件間で共通の刺激を用いることで、視点の違いのみが脳活動に与える影響をfMRIを用いて比較した。参加者は4コマのストーリーを1コマずつ提示され、4コマ目が他者および自己視点から推論される結末として妥当かをキー押し反応した。結果、MPFCの吻側部は他者視点、尾側部は自己視点でそれぞれ活動が強まった。また、TPJは両側で他者視点条件での活動が大きかった。これらの結果は推論に関して視点特異的な脳部位の存在を示唆する。