多属性意思決定において,合理的規範から逸脱した数種類の文脈効果が知られている.これらのうち,本実験では魅力効果に焦点を当て,先行研究に基づく12刺激(商品,サービス)の2属性を操作した.さらに,実験参加者(10名)の眼球運動を測定し,3肢選択課題において魅力効果が生じるメカニズムを明らかにすることを目的とした.今回の眼球運動測定実験でも,選択反応率において有意な魅力効果が示された.眼球運動データ分析の結果,魅力効果が示された試行では,ターゲットに対する停留時間が有意に長く,ターゲット項目内部のサッケード回数が有意に多く,さらに,ターゲット-デコイ間,ターゲット-コンペティター間では,コンペティター-デコイ間よりもサッカード回数が有意に多いことが見出された.筆者らは文脈効果を包括的に説明するモデルを提案しており,眼球運動のさらに詳細な分析と,実験データに基づくモデルの改良が今後の課題である.