ヒトは模倣によって新規動作を獲得できるが,自己の運動レパートリにない動作を模倣するには,対象動作と自己動作との時空間的な運動パターンを含めた動的なマッチングが重要であると考えられる.本研究はこのような動作模倣における動的なマッチングに関わる脳部位をfMRIで同定した.実験では呈示方法(動画/静止画)と課題(模倣/観察)の2×2デザインを採用し,まず無意味ジェスチャーが動画(初期から最終状態に至るまでの運動全体),または静止画(初期と最終状態のみ)で呈示された.その後,固視点の色(青/赤)によって協力者は右手で模倣するか,何もしなかった(観察のみ).結果から,右外側後頭皮質(EBA),右頭頂弁蓋,および左上頭頂小葉の活動に有意な交互作用が見られ,動画模倣で高い活動が見られた.無意味動作の模倣において,時空間パターンを含めた動的なマッチングがこれらの部位で行われていることが示唆される.