本研究では,ストレスに関連する思考を意図的に抑制することが,ワーキングメモリ容量に及ぼす影響を,思考抑制の実験パラダイムを用いて検証した。1回目のワーキングメモリ容量測定課題の後,実験参加者にはストレスとして,実験の最後にスピーチ課題を行うことが予告された。その後,5分間の待機期間が設けられた。その間,抑制群にはスピーチについて一切考えないよう指示が与えられ,統制群には特に指示が与えられなかった。最後に2回目のワーキングメモリ容量測定課題が実施された。1回目から2回目にかけてのワーキングメモリ容量の変化率を算出したところ,両条件においてワーキングメモリ容量は増加しており,課題の練習効果が確認された。ただし,課題の練習効果は,抑制条件において統制条件よりも小さかった。以上の結果より,ストレス関連思考の抑制がワーキングメモリ容量測定課題における練習効果を阻害することが示唆された。