これまでの研究では、演奏において、音楽的なアイディアの伝達や調整を可能にする、特定の非言語的技能があることが明らかになっているが、定量的に研究したものは少ない。演奏場面(ピアノアンサンブル場面)において、より良い演奏をするためには、どのような非言語情報が有効で必要であるのか。本研究ではこの点を探るために、実際の演奏場面においてどのような情報が使用されているのかについて定量的に調べることを目的とした、2台ピアノによる演奏の実験を行った。その結果、演奏条件(異室非対面条件、異室対面条件、同室対面条件)によって使用される情報の頻度は異なり、また演奏回数を重ねるにつれて使用される非言語情報の頻度は高くなり、ピアニストの演奏音に対する満足度も高くなるということが示唆された。これにより、ピアノアンサンブルにおいて、演奏音だけでなく、非言語情報を手がかりとして演奏することの重要性が示唆された。