対称な顔は魅力的であるとする実験的な結果がある。顔は本来対称であり,対称性が崩れるのは免疫的な問題などからであるとし,遺伝的な要因から対称の優位性を説明する。一方,通常人間の顔は多少の対称性の崩れがあり,そのほうが魅力的とする実験結果もある。対称性の魅力に及ぼす効果については,動物を用いた研究が多くなされており,対称性が高い方が繁殖の機会に恵まれるという報告が多くなされている。しかし,人間がある対象の魅力度を判定する場合,繁殖の目的以外の要因にも左右されることが想定される。本稿では,風景,果物,記号といった遺伝的な要因とはならない顔以外の対象も含めて,対称性があるものが好まれるのか否かを実験的に調べた。その結果,総ての対象について対称性のあるものが好まれるわけではないことが明らかになった。