投影的空間表現語の指示領域適合度分布に関する認知モデルであるAcceptability computation algorithm for projective spatial terms(ACAP)は、当該表現における最適点に関するモジュール(Pモジュール)と、主として三次元空間での参照対象回転による適合度分布変化への対応を目的とするモジュール(Rモジュール)を組み込んでいる。これらモジュールは心理学実験の結果から導入されたものだが、その認知心理学的意義に関してはまだ十分検討が成されていない。本研究では、過去の様々な実験研究のデータを用いてACAPによるシミュレーションを行い、両モジュールの認知心理学的意味について検討した。その結果、Pモジュールは当該空間表現語及び空間状況でのプロトタイプを反映していることが示唆された。また、Rモジュールはそのプロトタイプからのずれの程度を、視覚情報に基づき量的・空間的に反映していることが示唆された。