抄録
本研究では,ワーキングメモリによる情報の処理と保持が問題解決にどのように影響するのかについて,ディスプレイ上の外的表象の利用という観点から検討を行った。実験では,大塚(2003)と同様の領域に依存しない簡易な課題でワーキングメモリでの情報の一時的な保持と処理が必要な数字の組み合わせを推論する課題が用いられた。70名の実験参加者は,この課題を遂行するにあたり,必要に応じてディスプレイ上に表示される自己の解決プロセスが参照可能であった。実験結果をもとに,課題を効率よく解決し成績の良かった35名の高解決者群と成績の劣った35名の低解決者群に分割し,分析を行った。その結果,高解決者群の参加者はディスプレイ上の外的表象を低解決者よりも長時間利用し,適切に解の推論に利用していたことが示された。