抄録
本研究では、日本語の非正規語順効果に対するプロソディ情報の相互作用が検討された。(1a/b) 渡辺を佐藤が/中野が殴った(非正規語順)。(2a/b) 渡辺が佐藤を/中野を殴った(正規語順)。関西方言で、低起平板音調を持つ第1語(渡辺を/が)の後に、高起音調を持つ第2語(佐藤が/佐藤を)が現れる非正規(1a)/正規(2a)語順文と、音高変化がほとんどなく第2語(中野が/中野を)が現れる条件(1b, 2b) について、語句毎の読文時間が測定された。その結果、(1a)の第2語の読文時間だけが増加し、同じ非正規語順でもプロソディ変化がない(1b)や正規語順文(2a,b)では読文時間は増加しなかった。この語順×プロソディの交互作用は、ヲ格目的語が先行することによる第1語への焦点化と、第2語の音調が高起変化したことよる焦点化とが競合する条件(1a)で、処理負荷が増大したことを示すものと解釈される。