抄録
刺激を繰り返し提示することによって、その刺激に対する認知的・情緒的評価が変化すること、特に好ましさが上昇することがよく知られている(単純接触効果)。しかし、単純接触効果が生じる際に、その刺激に対する態度だけが変化するのか、それともその刺激の記憶表象自体が変化するのかという観点からの検討は未整理である。もし繰り返し提示によって記憶表象が変化するとすれば、より好ましい方向に印象が強調された画像が元画像と混同されやすくなると予測されるが、記憶表象が変化しない場合、そのような混同は起こらず、刺激に対する態度のみが変化していると考えられる。本研究では、顔刺激から感受される、品の良さや力強さなど様々な次元での印象を定量的に操作した画像を用いて、繰り返し提示した刺激と一度も提示しなかった刺激の印象と再認成績を比較した。その結果、印象次元によって、繰り返し提示の効果が異なる可能性などが示唆された。