抄録
本研究では,周波数解像度を劣化させた親密度の異なる単語の知覚に及ぼす聴覚性の直接プライミングの効果を検討した.実験1では,学習期に原音声をヘッドホンより呈示し,1週間後に劣化音声に対する聴覚性の単語同定課題を行った.実験2では,実験参加者はスピーカから提示される音声刺激で一斉にテストされ,また単語同定課題は学習期の10分後に行った.結果として,どちらの実験においても,親密単語と非親密単語の両方で学習項目の成績が有意に高かった.このことから,聴覚性のプライミング効果は,単語の意味的な情報よりもむしろ,音響的特徴や音声パタンのような知覚的情報にもとづいていることが示された.本研究で得られた知見は,日常生活における音声コミュニケーションなどにおいて,聴覚的な潜在記憶が音声知覚に寄与している可能性を示唆している.