抄録
欧米言語を中心として提案された発話産出モデル(Levelt et al.,1999)では,発話産出の過程において構音運動プログラムへのアクセスが想定されている。この運動プログラムは,実際の構音に関する音節の動作情報から成り立っているとされており,メンタルシラバリーと呼ばれている。メンタルシラバリーについては,語頭音節の頻度効果を利用した実験から検討が行われており,その実在性が示されている(Cholin et al.,2006)。本研究では,このメンタルシラバリーへのアクセスが日本語のような音節の構音動作の種類が少ない言語でもみられるのかについて,Cholin et al.(2006)の実験に基づき検討を行った。日本語の話し言葉における音節の頻度を調査し,発話産出実験を行った結果,音読潜時には語頭音節の頻度の影響が見られなかったが,スピーチ・エラーに関しては語頭音節の頻度の影響が見られた。