抄録
推論の二重プロセス理論の立場から、問題を熟考した際にフレーミング効果が消失するか否かという問題を検討する研究が近年盛んに行われている。しかしその結果は熟考によってフレーミング効果が消失するという結果と熟考はフレーミング効果に影響しないという結果とに大きくばらついており、一致していない。この研究では被験者の熟考の度合いの操作方法として被験者の思考時間の大小という要因を取り上げ、一度短い思考時間で回答した被験者が再度長い時間思考することによってフレーミング効果を克服できるかという問題を検討した。その結果、初めに10秒の回答時間を与えられ、その後10秒で再考する条件ではどちらの回答でも強いフレーミング効果が観察されたが、初めに10秒の回答時間を与えられ、その後五分の再考時間を与えられた条件では初めの回答では強いフレーミング効果が観察されたが、再考した回答ではフレーミング効果は消失した。