抄録
本研究では,首都圏の15-65歳の一般男女737人に対して,社会調査を実施して,懐古傾向の個人差,懐かしさを喚起するテレビCMの構成要素(昔の日本の風景,繰り返し聞いた曲など)とそれによって喚起される感情(懐かしさ,安らぎ,親しみなど)や記憶(過去の想起など),商品の記憶・好感度・購買意欲などを測定した.その結果,第1に,懐かしさの喚起には,反復接触と時間経過が重要であった.具体的には,昔何度も聞いた曲のように,過去の反復接触と,それを長い間聞いていないという,空白時間が懐かしさを喚起していた.また,これらの懐かしさ喚起傾向は,男性は加齢により上昇するが,女性は30-40代をピークに減少した.第2に,共分散構造分析の結果,個人の懐古傾向が,テレビCMからの懐かしさ喚起を高め,それが過去想起,CMや商品の記憶を促進し,広告への好意的な印象を媒介として,購買意欲に結びつくことが明らかになった.