本研究では、急速な運動における知覚と行為の調整を検討する目的で、けんだま遊びの技のひとつである「ふりけん」の分析をした。ふりけんとは、利き手でけんをもち、前に振り出した玉を返しながら、玉の穴をけん先でさす技である。この技は約一秒で完結し、正確さが必要とされる。 実験では、200試行のふりけん動作を三次元動作計測装置で記録し、玉と、けんをもつ手の動きを分析した。その結果、実験参加者は、玉を振り出した直後から玉の動きに合わせてけんをもつ手の速さを変化させていた。 特に、前に振り出した玉を返すという行為については、玉が一定の位置にあるときにそのタイミング合わせにおける手の速さが最大になっていた。 これらから、ふりけんにおいては、玉の動きという視覚的な情報を利用して手の動きが調整されており、したがって急速な運動であっても、環境情報を利用して行為の調整が行われていることが明らかとなった。