抄録
健常高齢者の物語の記憶では、加齢に伴い、緩やかに再生成績が低下する(佐久間ら、2006; 2008)。この再生量以外に、内容の理解にも加齢の影響があるかを調べた。地域住民を対象とする調査の参加者281名に対し、日本版RBMTの記憶の物語課題を聞かせ、口頭で再生(直後・遅延)を求めた。年齢群を中年(65歳未満)、高齢前期(65-69歳)、高齢中期(70-74歳)、高齢後期(75歳以上)に分けて、再生内容について、結末と文脈の2側面から比較した。どの年齢群でも結末が欠落または変容する人の割合は、直後再生・遅延再生とも低く(直後0~14.1%、遅延0~12.7%)、年齢群の差は認められなかった。結末までの経過を含めた文脈でも変容が生じる人の割合は比較的低かった。高齢者では、物語全体の再生量は減少しても、内容の変容は少ないことが示唆された。