抄録
展望的記憶の遂行には、予定内容の記憶だけでなく、何かするべきことがあるという意図の想起が重要である。これまで加齢が展望的記憶に及ぼす影響を検討した研究は数多く報告されているが、日常生活場面における意図の想起に加齢が及ぼす影響を検討したものは少ない。そこで本研究では、高齢者の意図の想起の経時的変化を検討し、年齢、回想的記憶能力、メタ認知的要因、自身の記憶に対する潜在的態度と意図の想起の関連性を検討することを目的とした。実験では、60代23名、70代17名に、3日後の約束した時刻に実験者に電話をかけるように求め、対象者の意図の想起回数とその想起した時刻を測定した。実験の結果、年代を問わず、遂行時刻が近づくにつれて意図の想起回数に有意な上昇が確認された。また、その上昇には自己の記憶に対する潜在的な自信が大きく関与していることが示された。