これまでの空間ワーキングメモリ研究によると,記銘・再認時に用いる感覚モダリティを一致させた視覚-視覚による空間記憶課題では,眼球運動が情報の減衰を止めるリハーサル機能を果たしており,同様に,記銘時と再認時に身体感覚を用いた課題においては,身体運動がその情報のリハーサルに関与していることが明らかにされている。このことから、空間ワーキングメモリには,眼球運動系と身体運動系の2つのリハーサルシステムが存在することが示唆されている。こうした知見をうけ、本研究では、記銘時に視覚,再認時に身体感覚を用いた視覚-身体感覚クロスモダル空間記憶課題を用い,その空間情報の保持に,眼球運動と身体運動による2つのシステムがどのように関与しているのかという問題を、二重課題法を用いて検討した。