抄録
自動車運転の得手不得手は何に起因するのか?発表者らはこれまで,個人の認知機能が運転行動の特徴を決定するという仮説を検証するため,認知機能課題の成績と実車運転時行動との関係を検討してきた.本研究ではとくに,空間イメージ機能と運転行動の関係に着目した.まず当該機能の計測課題を開発し,課題成績(高機能/低機能)と日常の運転頻度(高頻度/低頻度)に基づき,運転実験の被験者12名を選定した.運転実験では,走行後に出発点まで逆向きに戻る「帰路再生課題」,駐停車やS字路走行等の課題を行った.高機能群の被験者は帰路再生や駐停車の正確性,後進走行の遂行時間等で高成績を示しており,空間イメージ機能がこれらの運転行動と密接に関連するとわかった.また「低頻度・高機能群」の成績が,高機能群と同等かそれに次ぐ程度に高かったことから,認知特性の違いが運転操作に与える影響は,経験により小さくなりうるとわかった.