抄録
正田・永井(2008)の研究では,日常物体の線画を刺激とした視覚探索課題において,半数の妨害刺激を先行提示し,目標刺激を含む残りの刺激を追加提示した場合に,全ての刺激を一度に提示した場合よりも探索が効率的になった(先行提示効果)。また,目標刺激のカテゴリが予測可能な状況では,先行刺激と目標刺激が同カテゴリの場合に,異カテゴリの場合に比べ探索が非効率的になる現象(カテゴリに基づく負の持ち越し)は生じないことが示された。本研究では,先行刺激の提示時間を従来(1秒間)よりも長い3秒間とした場合に,目標刺激のカテゴリが予測可能であってもカテゴリに基づく負の持ち越しが生起するかを調べた。実験の結果,カテゴリに基づく負の持ち越しが部分的に生じたことから,先行刺激の提示時間が十分であれば,目標刺激のカテゴリの予測可能性に関わらず先行刺激のカテゴリに対する抑制が目標刺激へ般化する可能性が示唆された。