抄録
行為・文一致効果は,呈示される刺激文の方向性と,課題で要求される行為の方向性が一致する場合に,行為が促進される現象を指す。平他(2009)では「主語+起点+他動詞」からなる刺激文において行為・文一致効果が生じることを示した。一方で,Bergen et al.(2007)では,同様の実験パラダイムを用いながら「主語+自動詞」からなる刺激文で,逆の結果が見られた。こうした違いは,起点の有無,および刺激文の動詞が自動詞であるか他動詞であるかによるものであることが考えられる。本研究では,以上の問題点をもとに2つの実験を行った。実験1では「主語+他動詞受動態」からなる刺激文を,実験2では「主語+起点+他動詞受動態」からなる刺激文を使用し,行為・文一致効果を検証した。2つの実験の結果,いずれの場合においても行為・文一致効果は見られなかった。以上から,行為・文一致効果は動詞の性質により生起することが示唆された。