本研究では,笑い行動の社会的側面について検討するため,初対面の他者とともに映像を視聴する実験を行った.予備調査の結果から,セルフモニタリング得点の高/低群として12名ずつを選抜し,それぞれ実験協力者が同席する状況で笑いを誘発する内容の映像を3本視聴した.最初の1本は練習試行であり,あとの2本は,同席者の反応がまったくない条件と,笑ったり身を乗り出すといったポジティブな反応を示す条件のもとで視聴し,1試行ごとに映像の評価と印象について評定を行った.視聴中の行動と視聴後の評定を分析した結果,セルフモニタリングの高い人は同席者がポジティブ反応を示す条件で声に出す笑いを増加させるが,その一方で,映像の印象評定は変化しないことなどが明らかになった.これらの結果から,笑い行動が対話方略として用いられることや,セルフモニタリングが場の空気を読み行動を調節する力と関係していることが示唆された.