抄録
本研究では,我々が文を産出する時はイメージ中で視点を置いた対象を主語とし,一方で文を理解する時には主語の視点を利用してイメージを形成していくという仮説を立てて実験を行った.実験において,被験者はまずイベント画像を観察しながら,指定された対象を主語としてその状況を内言した.冒頭の仮説に従えば,この内言の主語と続けて提示される文刺激の主語が一致しない場合には視点変換が生じる.この実験中の脳活動をfMRIで計測した結果,視点変換を要する条件では左上頭頂小葉から楔前部にまたがる領域で活動が増加した.また我々の先行研究から右背外側前頭前野が文理解における視点変換に関与する可能性が示唆されていたが,本実験でも視点変換を要する条件において同領域での活動増加が有意傾向であった.以上から,文のイメージが頭頂領域に形成され,そのイメージにおける視点変換に右背外側前頭前野が関与していると考えられる.