抄録
大学生を参加者とする偶発記憶手続きを用いた集団実験によって,記銘語対を選択する際の選択規準を教示によって明確にすることによる効果を検討した。方向づけ課題では記銘語対においてより快もしくは不快なエピソードを喚起する記銘語を選択するように求める自己選択条件と,実験者が選択した記銘語に対して参加者がその判断と同じかどうかを選択するように求める強制選択条件を設けた。直後の偶発再生率を比較した結果,快語と不快語による記銘語対ではいずれの教示によっても自己選択効果が出現し,不快語同士の記銘語対において,教示(より快なエピソードを喚起する記銘語を選択するか,より不快なエピソードを喚起する記銘語を選択するか)によって,自己選択効果の出現が規定されることが示された。この結果は,記銘語対を選択する際の選択規準を明確化することによって自己選択効果が規定されるという統合仮説からの予想を支持した。