抄録
一昨年の発表(小川と乾, 2008)では,マウスカーソルを使った描画における視覚運動変換に内側頭頂間溝(mIPS)が関わることを示した.しかしmIPSが運動対象を(1)スクリーン上のカーソル中心座標系,または(2)実際の身体(手)中心座標系のどちらでコードしているかは不明であった.よって本研究では,反転マウスを使って2つの座標系を分離した上で,fMRI多ボクセルパターン分析を使ってmIPSの座標系を直接的に解明した.協力者はカーソルを使って左右のターゲットへの到達運動を行った.分析では,まず通常マウスの脳活動パターンを用いて識別器を訓練し,次に反転マウスの脳活動パターンに対してどちらの座標系で左右方向の識別が可能かを検討した.結果からmIPSでは(2)身体座標で有意な識別精度が得られた.このことはmIPSでは実際の身体(手)を基準とした自己中心座標系で運動対象がコードされていることを示す.