抄録
本研究の目的は抑うつや特性不安が音楽聴取の影響のされやすさに影響しているかどうかを検討することである。本実験では,音楽聴取の影響を状態不安,気分,生理的反応の点から多面的に捉えた。実験では,無作為に高揚的な音楽,鎮静的な音楽,Altshuler(1954)の同質の原理およびレベルアタック技法に基づく漸進的に高揚的な音楽を呈示する3つの条件に実験参加者を割り当てた。それらの条件間で見られる影響を抑うつや特性不安との関連と同質の原理の観点から検討した。
結果として,レベルアタック条件では,音楽聴取後に状態不安が減少し,また,抑うつが高い人ほど状態不安が減少しやすかった。しかし,特性不安との関連はみられなかった。また,レベルアタック条件では,特性不安が高い人ほど,多面的状態尺度における抑うつ不安が減少している傾向がみられたが,抑うつとの関連は見られなかった。さらに,高揚的音楽条件では抑うつが低い人ほど心拍が増加しやすかった