抄録
呈示された刺激図形を心的に回転させて判断させる心的プロセスであるメンタルローテーションにおいて、その角度差が大きくなると判断に要する反応時間も長くなるが、刺激を手の線画に変えて行った場合は右手および左手それぞれの可動範囲に従った非対称的な反応がみられる。本研究では、高齢者を実験対象者として加齢による影響について検討した。その結果、加齢に伴い反応時間の延長がみられた。また右手および左手に関しては同様にその可動範囲による非対称的な反応がみられたが、加齢に伴いその差がより著明になることがみられた。一方、誤答率はそれぞれの年齢においてみられるが、加齢によって増減している傾向はみられなかった。これらから、加齢に伴い手のメンタルローテーションにおける触運動的なイメージの影響がより強くなっていくことが示唆された。