抄録
我々の感じる時間の長さは様々な要因によって実際よりも長く、もしくは短く感じられる。これまでの研究で朝と夕方で主観的時間の長さが異なることが知られている。しかしこの結果はあくまで実験室で得られたデータであり、実際の生活リズムを反映しているとは言いがたい。そこで本研究では携帯電話で実験できるよう、実験プログラムを組み込んだ専用アプリを開発することで、普段の生活の中で感じる時間の長さを調べた。実験では1時間に1度、アプリが自動で立ち上がり、実験協力者はストップウォッチ課題(3秒経過したと感じたらボタンを押す)を行った。実験の結果、時間帯によって作成時間の長さ(ストップボタンを押すまでの時間)に変動が見られた。特に正午と夕方の時間帯で作成時間が有意に短くなっていた。この結果は実験室で得られた知見とは異なり、我々の感じる時間の長さが食事や仕事などの生活リズムによって変動することが明らかになった。