抄録
非効率的な視覚探索が起こるはずの刺激の半数を先行提示し,半数を追加提示すると,探索は先行刺激数に依存せず効率的になる (視覚的印付け: Watson & Humphreys, 1997).この効果は先行刺激の形態が変化すると消失することから,変化前後の形態の同一性に左右されると考えられていた.本研究では,標的に対する注意の構えにより形態が変化しても印付けが維持されるかについて検討した. その結果,実験開始時の教示により標的と先行刺激との定義属性に対して構えが形成された際には,形態が変化しても印付けが生起した.また,直前の課題からのキャリーオーバー効果との関係を調べたところ,先行する課題から標的と先行刺激間の定義属性に対する構えが引き継がれた際には,印付け効果が生起した.この結果から,形態変化に伴うボトムアップ信号からの印付けの維持にトップダウンプロセスが介在することが示唆された.